“ロケットダンサー 『溢れ話』”

“彼女が自らそれに志願したのは孤独のせいだけではなかった。”

時代を錯誤する習わしも慣れれば常識となり、空気となり、やらなければいけない義務となる。

人外が跋扈するサイエンスフィクションであればまだ救われるが、紛れもなく人間が人間をすり減らしている。食糧や資源の危機は皮肉にも解決されたように思えたが、観測者がいないためにデータには残らない。残ったとして、それが意味を残すのかどうかの瀬戸際であった。

「眠れない夜」を文字通り体現する夜が来るとは思ってもいなかった人間たちは、いつものように目を瞑って昼を待つしかない。

踊り子とは、数学であり、工学であり、ロマンであったため、人生の大半をかけて星を見つめていた妙齢の彼女が支持を得るのも不思議なことではなかった。

今彼女が考えていることは決して平和や、村の人々のことではなく、記憶に引っかかる0.01ミリにも満たないトゲのことである。

少女とも言える時代、共に空を見上げた少年が、今何をしているのかが、何故だか気になって仕方がないのだ。

それはきっと女という性である故の感情ではなく、自らの思考の迷い家であることを理解していたが、だからといって無視することは出来ないノイズとなり、永遠に続くような作業を止める口実になったので、彼女は好んで「何故それが自分にとって気にかかるのか」という思考のパズルを楽しんでいた。

実のところ、彼女が費やしてきた時間に意味など無く、感傷もない。そもそも物事に「意味」があるなんて理屈は戯言であり、成功者が唱える結果論の極一部である。

彼女の笑みは人々に影響しない。自身の自身による自慰的思考、戯れ、終わりまでの暇潰し。

犠牲という言葉すら生温く感じた。

ただ1つ揺るぎないことを挙げるとすれば、彼女が誰よりも空を好きなことだけは、結末を見るまでもなく、その横顔を見れば誰しもが理解することだろう。

踊り子は、世代を紡いで絶望を見守る。

燃料らしい燃料は、それを見上げる人々の想いだけらしい。

ロケットダンサー

ただ知らないだけで

ただ幸せなだけ

まだお昼の時間には早いか

ああ早起きしたから

そうだ街まで歩こう

ちょっと汗ばむくらいが良いよね

燃料は花束で太陽のライトアップ

青い空突き刺す煙と光

かんかん照りの追いかけっこ

自転車こいでかわりばんこ

僕らのためのロケットが

まるで走馬灯の様に飛んでった

だんだん空が丸くなって

終わりの見えないかくれんぼ

ステージの上で笑えば

とても綺麗だね、ロケットダンサー

たったひとつの言葉が

ずっと思い出せないな

不意にあいつの笑い声が聞こえた

勇気振り絞って書いた

つぎはぎだらけのラブレター

夜が不自然に明るくて怖いから

昔手を繋いで歩いたひまわり畑

遠く離れていても宇宙で踊る

ふたりはいつもおいかけっこ

朝から夜でかわりばんこ

みんなのためのロケットが

まるで合図の様に突き刺さった

だんだん空が丸くなって

終わりの見えないかくれんぼ

ステージの上で笑えば

とても綺麗だね、ロケットダンサー

かんかん照りの追いかけっこ

自転車こいでかわりばんこ

僕らのためのロケットが

まるで走馬灯の様に飛んでった

だんだん空が丸くなって

終わりの見えないかくれんぼ

ステージの上で笑えば

とても綺麗だね、ロケットダンサー